III.ヨット部の強化と環境

顧問教官・部長 村上保壽(現名誉会長)

(1)

 ヨット部が昭和52年3月27日に山口県ヨット連盟に加盟して以来、光市の県連関係者の方々から艇および指導者について多大の援助と協力を得たことは、決して忘れてはならないことである。最初の半年間は主に高校と新日鉄の艇を借用したりして練習を行っていたが、昭和52年のインターハイでの使用艇のうち3艇を学生部に購入してもらってからは、借用艇と自艇のスナイプ5艇で以後数年間の練習を組むことになった。はじめの一年の走りは全く素人以外の何者でもなく、ジャイブはあぶなくてよほど穏かな風と波のときでないと成功しなかったようだったし、チューニングなる言語は存在していなかったのではないかと思われるほどであった。

 強化の第一歩として昭和53年5月に三校対抗戦を光で行った。県連の全面的な協力のもとにスナイプだけによるレースであった。当然のように最下位であったが、以後、高校生や社会人との練習や大小さまざまなレースを通して、少しずつではあるが走りについて強化して行くと共に、艤装等、ルール等、セーリング等々について研究しながら一歩一歩前進して行った。しかし、レースにおいては、第一上マークまでは比較的よく走っても、フリーではいつも最下位に置いて行かれるというパターンであった。

 昭和54年中国インカレに初出場することによって、ヨット部の目標ができ、以来、大学ヨット部としての活動、強化のスケジュールができ上がったのである。そして昭和56年に470級3艇が購入され、この年からインカレ、フルエントリー出場をはたした。成績については割愛するが、レースについて言えば、フリーと微風に弱い山大というのが伝統になるかと思われたが、この点に関しては、7期生の頃からフリーでもよく走るようになって来て、レースによっては中国インカレでシングル上位に入るまでに成長した。その結果、昭和59、60年と全日インカレに出場するまでになったのである。

(2)

 強化における問題について、光での合宿は高校や社会人のチームとの合同練習と様々のレースに出場する機会が得られたことで、強化の面では非常に役に立った。その点で言えば、秋穂に移ったことは従来どおりの強化にとってはマイナスであったといえる。しかし、このマイナスを補う為に、昭和59年から始めた広島修道大学との合同合宿および西日インカレ出場、さらに昭和60年からの中四国インカレ出場は、マイナス面を積極的にプラスに転化しえたということで、質的な強化を促進させることになったといえる。

 第一に、各種インカレに出場することで、光のレースだけではわからなかった大学間の差異が把握できたことと、中国、全日インカレを目標とする上で強化に役立っているということである。第二に、秋穂に移ってからは、合宿自体もいろいろな面で充実できるようになり、冬合宿を含めて合宿日数が増え、昭和60年からは水曜日の乗艇さえも可能になったことである。しかし、とはいっても光でのメリットがなくなったことは事実である。その点の克服を常に考えて、秋穂のデメリットをメリットに転化することを研究する必要がある。

(3)

 保有艇に関して記しておくと、スナイプはその後学生諸君の自力で2艇、そして秋穂に移ってから3艇を購入してもらい、現在8艇である。しかし、昭和52年の艇はもう寿命である。

 470については、昭和59年と60年で3艇購入してもらい、現在6艇であるが、これは短い寿命であるので、できるだけ早く新艇の購入が必要である。

 救助船については、昭和55年に下関市の山陽FRP工業で「ふしの」を新造することができた。このことによって、光での孤立した練習の充実がはかられたことは、強化の上で大きな前進であった。秋穂に移ってから連絡艇「はやて」を購入してもらったが、故障がちで名を汚している。

(4)

 ここでヨット艇庫、合宿所建設について総括しておきたい。最初の計画は昭和53年に学生課の下で計画が進められ、事務局(経理部長)の尽力で予算も付いたのであったが、山口氏漁協の一部から漁業権の問題で最終的な理解が得られず、この計画は破綻したのであった。

 昭和56年の冬から再び艇庫建設について活動を始め、今度は秋穂町にお願いすることにし、藤田前町長、三好前助役のご理解とご協力のもとで現在の土地に艇庫の完成を見たのである。しかし、今回もさまざまな問題が発生したが、地権者の多田さん、漁業組合長さんのご理解とご尽力、そして大学では佐藤士郎事務局長、友瀧学生部次長、瀬口課長、大谷補佐各位の理解と尽力で艇庫が建つことになったのである。ここに各位の名をあげて感謝の記念としたい。

 秋穂に艇庫が完成してからは、光でのさまざまな人間的、社会的関係からくるわずらわしさと肩身の狭さがなくなり、学生の自主的で自由な活動が可能となった。そして4・5月の大潮の時期を除いて、練習海面等々については光よりもむしろ恵まれており、波、潮、風力、風向等々の変化に富んでいることなどから考えると、物理的条件としては強化の為にすばらしい環境といえる。



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