光り輝く!光での合宿生活

(6)鬼キャプテン柿木

5期・主将 木村慎一郎

 それにしてもすごいタイトルだ。このタイトルは多分S氏の考案と思われるが、ゴチャゴチャ細かい事を書かなくてもこれだけで柿木さんの現役時代がしのばれるというものだ。当時、柿木さんは本当に鬼のように怖かったのだ。

 最初に柿木さんにお目にかかったのは入部を申し込みに当時教養部の4階にあった村上教官室に行った時だったと思う。村上先生と女性の3人で談笑されていた。先生に「キャプテンの柿木だよ。」と紹介していただいたのだけれども、運動部のキャプテンとはおよそ思えないほどインテリに見えた。「ずい分軟弱そうな人だな。」と少し不安になったけれども、そんな不安はその後跡形もなく消えた。

 我々が1年の夏合宿くらいから柿木さんは少しずつ鬼の本領を発揮されはじめた。夜のミーティングで次の日の乗艇の予定が発表される。一同息をのんで静まり返っている。「22604、柿木、木村..。」他の奴等の安堵のタメ息の中で、私一人が海底深く沈んでゆく。消灯後のベッドの中でクルーワークの基本姿勢を確認し、来るべき試練に対する心の準備をしながら眠りにつく。しかし、そうした努力も空しく、翌日は柿木さんのカン高い怒鳴り声の中で、ドタバタ、オロオロするばかりなのだ。何をやっても怒鳴られる。必死でやればやるほど、三角の目をして怒鳴られる。同期の岩松が柿木さんと乗艇した時などは、「艇の中でクネクネすな!」と言う上マークでの怒鳴り声が陸まで聞こえたそうである。それ以後岩松のクネクネは有名になった。

 柿木さんは実に厳しい人であったけれども、その厳しさは我々に向けられる分量以上に自分にも課されていたように思う。ヨット部のキャプテンとして活動されている間はもちろんの事、私生活においてもそうであったように思われる。私生活においても、というのは実際の私生活をつぶさに拝見したわけではないので断言は出来ないけれども、柿木さんから伝わってくる平生のストイックさがそれを感じさせる。今思えば柿木さんの本当の怖さというのはそのあたりにあったのではないだろうか。自分の甘えを見透かされる目を持っておられる柿木さんが怖かったのではないだろうか。

 今私は社会に入って5年目を迎え、仕事に追われる毎日を送っているが、多忙さに流される中でたまには自分自身を反省しなくてはならないと思う。久々に柿木さんの厳しい目を思い出しつつペンをおく。



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