中国レディース優勝

9期 庫本(現・佐藤)正子

かなり寒さのやわらいできた宮島での春合宿。朝から風もなく、糸のような雨が静かに降っていた。1985年3月17日、この日は、山田沙香と私にとって、最後のレースの日であり、3年間の楽しく苦しいヨット部生活にピリオドを打つ日であった。

しかし、お昼近くまで待っても、風が吹かない。このままでは、私たちのレディースは流れてしまう、と不安に思った。午後になって、ようやく吹いてきた。他大学の方々も参加して下さるとのことで、レースを行うこととなった。

中国水域レディースと立派な名前はあっても、広島修道大学の永井・野田組、山大の山田・宮本組、庫本・川辺組の三ばいだけのレースである。それに、修大、広工大、山大の男子の艇が参加してくれた。

私にとってこの時のレースは、まさに「人生」だった。スタートはまずまずで、クルーの言葉を信じると、トップに近かったとのことである。しかし、それも束の間で、私たちにとって、オーバーパワーの風に支配されてしまった。第一上を回航する時は、中ごろにいたと思う。やがて、風はなくなり、うねりのみ残ったベタになり、艇を止めてしまった。この時、沙香の艇は幾はいか前を、修大の女子の艇は、後ろにあった。そして下マーク回航の直前に、この修大の艇に抜かれ、三ばい中の三位になってしまった。クルーの川辺まきも悔しそうだった。

そして、最終上、思い切って艇角を変え、逆方向からきたブローにうまくのった。そして、他艇がゆらゆら揺れている中、私の艇は艇速をつけて、上っていった。気がつけば、修大の艇も沙香の艇も後ろにいる。北村君、佐藤君の応援を受けながら、フィニッシュラインにあと一艇身というところで、なかなか進まなかったことが忘れられない。

そして、フィニッシュ。まきと手をとり合って泣いた。 「先輩、うれしいですね。」 と、まきは言ってくれた。私は、一年生でよく頑張ってくれた彼女に、感謝の気持ちで一杯だった。着岸しながら、ヨットの上から見た宮島のすみ絵のような美しさは、忘れられない。

浜で後輩たちの、よくやったコールに再び感動した。その夜の打ち上げでは、本当においしいお酒が飲めた。私にとって、この時が、21年間の月日のうちで、一番うれしかった時である。

最後に、村上先生、先輩の方々、後輩の皆さん、そして同期の仲間、特に山田沙香さん、苦しかったけど、素晴らしい思い出をありがとうございました。中国水域レディースが、ますます発展するように祈っています。



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