幻の西日トップフィニッシュ

8期 佐々木康宣

 昭和59年4月、私達第八期部員は、山大ヨット部として初めて西日本インカレに参加した。この大会では、大レースでのスタート、マークへのアプローチなど考えさせられることが多かったが、一番印象に残っているのは、失格ではあったが、大集団を後に見ながらすべてのマークを回航できたことである。

 それは、二日目のことだった。前日の良くない結果に、OB方からの「思いっきり実力を出して来い。」という言葉と後輩の応援に励まされてレース海面へと向かった。風は順風、オンデッキからフルバランスの風である。スタートの少し前に風は下にふれたために、下スタート有利の状態となった。私は下スタートが得意だったので、「よし、トップでフィニッシュしてやる。」という意気込みでスタートの合図を待った。だが全体が徐々にポテンシャルを上げていき、結局ゼネラルリコールとなってしまった。

 しかし、「今度こそは。」と次のスタートまでの数分間、風・潮の流れ・他艇の動きなどを考えてスタート練習を行う。「よし、これならきっといいスタートができるぞ。」と次のスタートの合図を待った。三十秒前からヨットを動かし出す。そして、いよいよスタートの号砲。「よし、やったぞ。ジャストスタートだ。このまま上マークまでトップでいこう。」とクルーの北村と励まし合う。

 運にも恵まれたのか、そのままトップでコースを回っていく。「やっぱり前に誰もおらんのは気持ちがいいのお、北村。」と話し掛けると、北村も「そうですね。」と満面に笑みを浮かべている。そして、ついにトップフィニッシュ・・・・と思った。しかし号砲は鳴らない。何故かと思い母船に聞いてみた。すると、「残念ですね。ゼネリコの後は一分間ルールというのを忘れていたでしょう。」との返事。私達のレース中の感動は一挙に吹き飛んでしまったのでした。

 ヨットレースというのは本当に難しい。たった一つの失敗、例えばリコール、ケース、ルール違反などで、それまでの努力がすべて水の泡となってしまうのである。そのためだろう、「あの時に、もしどうしていたら・・・」、「もし、あれがなかったら・・・」という「たら」という言葉をレースが終わった後でよく耳にするし、自分でも思うことが多い。でも、やはりそれがあるからヨットレースなのだろう。もしこれからヨットレースに出場することがあれば、この「たら」を言わなくてもよいスキッパーでありたいものだ。



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